再生糸とは、使用済みの繊維製品や工場で発生した廃材、ペットボトルなどの廃棄物を原料として作られた糸のことです。従来は廃棄されていた素材を回収・処理して新たな糸として再生することで、資源の有効活用と環境負荷の軽減を図った持続可能な繊維素材となります。
リサイクル糸やエコ糸とも呼ばれることがあります。
項目 | 再生糸 | バージン糸 |
---|---|---|
原料 | 使用済みペットボトル、繊維くずなど | 石油などの未使用資源 |
環境負荷 | 低い(廃材の再利用) | 高い(資源採掘・製造にエネルギーが必要) |
価格 | 比較的安価(素材による) | 安定しているがやや高価な場合も |
品質の安定性 | ロットによって差が出る可能性がある | 安定している |
採用例 | エコ製品、企業ユニフォーム、作業着など | 高機能衣料、アウトドア用品など |
バージン糸は石油などの新しい原料から製造される糸であるのに対し、再生糸は既存の廃材や使用済み製品を原料とする点が大きな違いです。製造工程では、再生糸は原料の回収・分別・洗浄・溶融といった追加の処理が必要になります。
品質面では、バージン糸の方が繊維強度や色の均一性に優れる傾向がありますが、技術の向上により再生糸の品質も向上しています。
使用済みペットボトルを回収し、洗浄・破砕してフレーク状にした後、溶融・紡糸してポリエステル糸を製造します。
1枚のTシャツを作るのに約25本のペットボトルが使用される計算になります。この製法により、石油由来の新しいポリエステル製造に比べて約60%のエネルギー消費量削減が可能となります。
繊維工場で発生する裁断くずや不良品、染色工程で出る残糸などを原料として再生糸を製造する方法もあります。これらの廃材を色別・素材別に分別し、細かく粉砕してから溶融・紡糸することで新しい糸として生まれ変わります。
工場内で発生する廃材を有効活用することで、廃棄物の削減と製造コストの抑制を同時に実現できます。
再生糸の最大のメリットは環境負荷の軽減です。廃棄物の削減、新規資源の使用量減少、CO2排出量の削減といった効果があります。
また、企業にとってはSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みやCSR(企業の社会的責任)活動 の一環として活用できる点も大きなメリットとなります。消費者の環境意識の高まりに対応した製品展開も可能になります。
再生糸は原料の性質上、バージン糸と比較して品質にばらつきが生じる場合があります。色の均一性や繊維強度において劣る可能性があり、用途によっては注意が必要です。
また、再生回数が増えるほど繊維の劣化が進むため、無限にリサイクルできるわけではありません。製造コストがバージン糸より高くなる場合もあり、価格面での課題も存在します。
多くの企業が環境への取り組みを重視する中、再生糸を使用した作業着やユニフォームの採用が増加しています。従業員に環境配慮型の制服を着用してもらうことで、企業の環境意識をアピールし、ブランドイメージの向上につなげることができます。
また、取引先や顧客に対して具体的な環境活動として紹介できるため、企業価値の向上にも寄与します。
再生糸で作られた作業着は、軽作業やオフィスワークに適した製品が多く展開されています。ポロシャツやブルゾン、パンツなどの一般的なワークウェアから、事務作業にも対応できるビジネスカジュアル調のアイテムまで幅広く利用されています。
快適性と環境配慮を両立した製品として、様々な業界で採用が進んでいます。
再生糸は廃棄物を有効活用した環境に優しい繊維素材として、持続可能な社会の実現に向けた重要な選択肢となっています。
品質面での課題はあるものの、技術の進歩により着実に改善されており、作業着やユニフォームの分野でも積極的に活用されています。企業のSDGs対応や環境ブランディングの一環として、再生糸を使用した製品の導入を検討する価値は十分にあるといえるでしょう。